ふたばで子育てする人のリアルボイス #009│富岡町在住Yさん・Aさんご夫妻
今回インタビューしたのは、富岡町在住のYさん・Aさん夫妻です。おふたりとも双葉郡のご出身で、2022年3月にYさんのご生家がある富岡町へ戻って来られました。震災前から双葉郡での暮らしを知るおふたりが、子育てをする親として戻ってきたリアルな生活の様子をご覧ください。
—本日のインタビュー場所であるおうちは、ご実家ですか?
Yさん(夫):そうです。父が建てたんですが、震災後に避難場所へ移ったので譲り受けました。震災後からずっと妻と子どもと暮らしていたいわき市から今年3月に引越してきました。決め手は、2019年の台風による水害で2度目の被災をしたのがきっかけです。
—お子さんがいながら被害に遭われて大変でしたね。
Yさん(夫):被災後すぐに、別のアパートを探して暮らしていました。しかし、田舎者だからかアパートでの暮らしに慣れるのが大変でした。子どもへも「隣りに声が聞こえるから」「壁をたたかないで」などと怒ってばかりでした。それなら富岡町へ戻ろうと、前向きな気持ちで決断しました。
Aさん(妻):ただ、年少から通っていた幼稚園から富岡町のこども園へ転園させることに不安がありました。私自身、年長で転園した経験があり、すごく嫌だった記憶が鮮明にあったからです。
—実際、富岡町のこども園へ通われてどうですか?
Aさん(妻):少人数で過ごす園生活が長男にはすごい合っていました! のびのびと過ごせているので、とても安心しています。
—何か困っていることはありますか?
Aさん(妻):病院は今一番困っていて……。
1年前くらいに富岡町に泊まりに来ていました。その夜に次男の腕が抜けてしまうことがあって。『ふたば医療センター付属病院(※1)』に電話すると、専門医が不在で「いわき市へ行ってください」と言われてしまいました。救急なのに受診できないこともあるのかと、とても不便でした。
あと、小児科はもちろん、皮膚科や耳鼻科など専門病院が不足してるなと感じています。近くの病院を受診しても治りが悪いと、0歳から通っているいわきの病院へ行っています。馴染みがあって安心しますが、遠いので大変です。
—日常的な買い物はどうですか?
Aさん(妻):基本的に『さくらモールとみおか』か、楢葉町の『ブイチェーンネモト』に行きます。ただ、単身者も多く住んでいるためか、1パックの量が少なく割高な気がします。なので、まとめて買いたいときは南相馬やいわきまで足をのばします。
Yさん(夫):いわきには毎週行ってるね。いとこ夫婦が住んでいるので、遊びがてら買い物も済ませてきます。
(インタビュー中、長男が虫を家の中に入れようとして…)
Yさん(夫):ストップ! すいっちょん(※2)家の中に入れないで!
—子どもたちは虫が好きなんですか?
Aさん(妻):最近興味が出てきました。ここにはいっぱいいるからかな。
Yさん(夫):いろんな花や草にもすごい興味を持っていて、この辺を30分や1時間散歩するだけでも楽しそうです。外遊びは公園か散歩で事足りています。公園は、楢葉町の『天神岬スポーツ公園(※3)』や広野町の『二ツ沼総合公園(※4)』に行くことが多いですね。
—では、休日はご家族そろって散歩したりしてるんですね。
Aさん(妻):そろってはなかなか……(笑)。平日は私がずっと子どもたちと過ごしているので、休日は夫に任せちゃいます。
Yさん(夫):土日に子どもふたりを連れて遊びに行くことはしょっちゅう。三食ご飯もつくります。中華、フレンチ、イタリアン、和食とひと通りは。典型的ですが、後片付けは嫌いです(笑)。そこまでワンセットでやってくれと妻には言われます。
Aさん(妻):お義父さんがお料理が好きで上手なんです。それを子どもの頃から見ているからか、よくつくってくれてとても助かっています。けど、こだわるのでたまに面倒くさいなと感じるときも(笑)。サラダにかけるドレッシングをつくってくれるんですが、キッチンとダイニングを5往復くらいして……。
Yさん(夫):白ワインを煮沸してアルコールを飛ばして、オリーブオイルとバルサミコ酢、砂糖、塩、バジルをカチャカチャして。ドレッシングつくるのは好きですね。
Aさん(妻):誰かがつくってくれた料理を食べられるのってうれしいですよね。自分でつくるとそれだけで疲れちゃって、食べる気にならないんですよ。
Yさん(夫):食べてもらって、「うれしい」や「おいしい」って言ってもらえればそれでいいかな。
—地元に帰ってきて、知り合いの人には会いますか?
Yさん(夫):たまたま、近所を見回りをしていた消防団のなかに同級生がいました。けど、それっきり顔見知りの人に会うことはないですね。
Aさん(妻):もともと住んでいた人が戻ってきた話はあまり聞かないです。私は、コトハナ代表のみなみさんのお子さんと長男が同じこども園で、みなみさんに声をかけてもらいました。それからコトハナのイベントへ毎回のように参加しています。それを通じて仲良くなった人もいるので、富岡に来てよかったなぁって思います。子育てという話題を共有できる相手がいて、ちょっとした会話の流れで相談できることがうれしくて、すごい助かってます。
Yさん(夫):イベントに参加している妻を見て、こんなにアグレッシブな人だったの?とびっくりしています。すごく楽しく成長させてもらっていて、充実しています。
Aさん(妻):とても充実していて、今年は1年が過ぎるのがとても早く感じます! ストレスがなくなったからか、富岡に来てから風邪を一度もひいていません(笑)
Yさん(夫):家族としても助かりますね。私が堂々と風邪ひけるんで(笑)
—ストレスは万病のもとですね。富岡町で充実した子育てをされている様子をおうかがいできて楽しかったです! 本日はありがとうございました。
(※1)ふたば医療センター付属病院について
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/futaba/
(※2)すいっちょん
ウマオイの別名。「すいっちょん」と鳴くことからその別名がついたとされる。
(※3)天神岬スポーツ公園
(※4)二ツ沼総合公園
取材日:2022年10 月
取材・文:ナッツ
イラスト:Ayami