公開日:2023-12-27 最終更新日:2024-01-12

ふたばで子育てする人のリアルボイス#10│双葉町在住Mさん・Tさん

今回インタビューしたのは、双葉町在住のMさん・Tさん夫妻です。2023年3月末に、ゆかりのある双葉町へ一家でお引っ越し。地域の再生が始まった双葉町で、子どもたちとともに暮らすおふたりのリアルな生活の様子をご覧ください。※双葉町は、2022年8月30日に、特定復興再生拠点区域の一部地域で避難指示が解除され、取材当時(2023年8月)に約80人が町内に住んでいました。※Tさんは、お仕事の関係で遅れての登場となったため、インタビューはMさんメインの内容となります。

―双葉町の住み心地はいかがですか?

2023年3月末に双葉町に引っ越して丸4ヶ月経ちますが、まだまだ落ち着かないですね。私が7月から職場復帰をしたこともあり、生活のリズムがまだ整えられていないです。

今は町内の賃貸住宅に、夫と子ども3人、猫1匹と住んでいます。双葉駅の西側にできた「駅西住宅」も引っ越し先の候補に入れていたんですけど、5人家族にはちょっと狭いかなとか、小さい子もいてうるさいとお隣に迷惑かけちゃうかなとか色々考えて迷っているうちに、応募者が増えて抽選になってしまったので、それじゃうちは別で探そうと。

長女が4月から小学校に入学するというタイミングだったので、その前に引っ越しをしたくて。物件探しは大変でしたけど、運よく猫1匹だけなら飼ってもいいよと、大家さんに許可をもらえて、そこを借りることにしました。

双葉町にはファミリータイプの賃貸が少ないから、移住や帰還をしたくても、住める家がないって人が多いんじゃないかな。

―双葉町の学校はまだ町内で再開されていないですよね。お子さんはどこの学校に通っていますか?

浪江町の「なみえ創成小学校」に通っています。毎日、スクールバス(タクシー)が出ていて、それに乗って通えるので助かっています。

朝は長女ひとりでタクシーに乗って登校して、帰りはもう1世帯小学校に通っているお宅があるので、そのおうちのお子さんと一緒に帰ってきます。

双葉町で学校再開に向けての検討委員会が立ち上がったようなので、近い将来、町内にも教育施設ができたらいいなと思っています。

―お子さんの遊び場はどうしていますか?

学校が終わると双葉駅前の広場で遊んでいます。タクシーで帰ってきたら、そのまま双葉駅前で降りて、走り回ってますね(笑)。

旧双葉駅舎に常駐している「ふたばプロジェクト」※の人たちが遊んでくれることもあって、町の皆さんに見守られながらのびのびと過ごせているので、親としても安心です。

休日は、浪江町の「ラッキー公園」や「丈六公園」、富岡町の「富岡わんぱくパーク」などに遊びに行きます。双葉郡は屋内外ともに遊び場が多いので、いろいろなところに行って遊んでいます。

―日常的なお買い物はどうしていますか?

子どもたちのお迎えついでに浪江町の「イオン」で買い物したり、週1回長女が南相馬市のピアノ教室に通っているので、教室の待ち時間に「南相馬ジャスモール」で買い物したりしています。富岡町に行くこともあります。

子ども用品は、南相馬市の「西松屋」などで買うか、通販を利用しています。他にも、コープ生協を使っていて、食材の他に日用雑貨や服を買うこともありますね。

8月に双葉町産業交流センター内に「ファミリーマート」がオープンして、食パンや飲み物、お菓子などちょっとした買い物ができるようになったのが嬉しい!

それに、双葉町内で、夜ご飯が食べられる場所もオープンしたので、仕事で疲れた時は家族で外食することもあります。

―病院はどうしていますか?

小児科はどこがいいかまだ探していますね。この病院、小児科ある! と思って行ってみても、そこで処方される薬がうちの子どもに合ってないな、とか。

最近行った南相馬市の「石原クリニック」は、先生も看護師さんも優しくて色々話を聞いてくれて、うちに合ってる感じがしました。なので、最近は子どもが急に具合が悪くなった時は、石原クリニックに行って、皮膚の薬が欲しいなど突発的なものでないときは、これまで通院していたいわき市内の病院に行っています。

双葉町に診療所があるので開院日に利用することもありますが、緊急の時などは町外の病院に行くしかないので、移動に時間がかかるのが不安ですね。

以前、住んでいたいわき市には「病児保育」があったのでよく利用していたのですが、この地域にはまだなくて。共働きをしていると仕事を休まざるを得ないので、あるといいなって思います。

―いわき市から双葉町に引っ越すことへの不安はありましたか?

双葉町の避難指示が解除されたら引っ越したいと以前から思っていたのですが、三女の妊娠が分かり、さすがに0歳児を連れて双葉町に住むということに関して、不安はありました。

放射線量は下がってはいるけど、実際問題として0歳児の体に影響が絶対ないと言い切れる自信がなかったので……。

でも、やっぱり自分が生まれ育った双葉町への思いが強くて。町に子どもが増えて欲しいし、子育て世帯も増えて欲しいので、自分がまず双葉町で暮らしてみようと思いました。

町の懇談会に参加したときに、ある人に双葉町で暮らそうと思うと相談したら「絶対いいよ! これからたくさん新しいことができると思う。子どもたちの成長にとってもいいと思うよ」と言ってもらえて。

双葉町で暮らしたいと言うと心配されることの方が多かったけど、前向きな言葉をもらえて嬉しかったですね。

―双葉町に住む前と住んだ後で、何か変化はりましたか?

ある程度覚悟はしていましたが、いわき市で暮らしていた頃と比べると、やっぱり病院が近くにないのは不便だなと感じます。小児科に行こうと思うと、一番近い病院でも車で30〜40分はかかります。自分はいいけど、子どもたちに何かあったときどうしようって。

放射線量の問題に関しては、町から線量計を借りて、毎月データを分析してもらっています。測ってみたら、思ったより線量は高くない。双葉町で暮らしていると、やっぱり「大丈夫なの?」って言われることも多いんですけど、ちゃんと「大丈夫だよ」って説明できるようになりました。

―お子さんはこの地域のことを、ある程度理解しているのでしょうか?

「なんでお家が壊れているの?」「なんで人がいないの?」と、子どもから聞かれたことがあります。

その時は「ここで昔大きな地震があって、体に良くないものがいっぱい飛んで、みんなここから逃げたんだよ」という話をしましたけど、どこまで理解しているかはわからないですね。でも、子どもなりに「双葉町はこういう場所なんだ」って感じている気がします。

―子どもたちには双葉町をどう伝えていきたいですか?

自分が育った町が双葉町だって、普通に思ってくれればなと思っています。

この地域で暮らしていると、「子どもは町の宝だ」ってたくさんの方に言ってもらえてそれはとっても嬉しいし、本当にそうだなとも思うんですけど、でもそれを子どもたちに押し付けたくはないんです。

普通に双葉町で成長していく中で、自然と何か自分で感じたものを言葉にしてくれればいいなって。

―双葉町に引っ越してから、お子さんに変化はありましたか?

最初は、お友達と離れちゃうし、引っ越しするのかわいそうかなって思っていました。引っ越してから一ヶ月くらい経ったときに「双葉どう?」って聞いてみたんですよ。そしたら「双葉気に入った!」って言ったんです。「なんで?」って聞いたら、「だって〇〇さんに会えるし、○○さんにいつも遊んでもらえるから」って(笑)。「双葉町にはこの人がいるから楽しい」って思ってくれるのが嬉しい。やっぱり“人”が大切だよなと思います。

あとは、騒いでいても誰も怒らないし、町の人たちが子どもにすごく優しく接してくれる。すぐ顔や名前を覚えてくれたり。それは子どもたちにとっても嬉しいことなんだと思います。

―お子さんの進学について、考えていることなどありますか?

今、町内には、中学校も高校もないので、このまま浪江町の中学校に通うことになるのかなと思っています。進学先の選択肢が少ないというのは、この地域で子育てしている人たちは誰もが感じていることではないでしょうか。

子どもたちが高校生になる頃には、もうちょっと選択肢が増えているといいなと思います。

でも今は、とにかくこの地域での暮らしをもっと楽しみたいと思っています。子どもたちにも双葉町を楽しんでほしい。

子どもたちや、子育て世帯が暮らしやすい町になるように、この地域に住んでいる私たちができることをしていければいいなって思っています。


※「ふたばプロジェクト」

一般社団法人ふたばプロジェクト:https://futaba-pj.or.jp/

取材日:2023年8月

取材・文:Satomi

イラスト:Ayami

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