cotohanaインタビュー|デザイナーKUMA YUKAさん
“子どものいる暮らしをもっと楽しく、もっと豊かに”を合言葉に活動するcotohana。このインタビューでは、cotohanaとその活動をともに育てる ひと を紹介しています。今回ご紹介するのは、cotohanaの情報誌やwebサイトのデザインを担当するKUMA YUKAさんです。共同代表の鈴木みなみとともにインタビューにこたえていただきました。KUMAさんがcotohanaの取り組みや地域をどのように見ているか、そしてデザインに対する思いをお聞きしました。
デザインの力と確かな情報で双葉郡のイメージを明るく
KUMA YUKA:震災前に富岡町で暮らしていたことがあったのがご縁で、今も富岡町に関わらせてもらっています。「双葉郡未来会議」※が発足した当初から、会の手伝いをしたり、そこが発行する郡全体の情報を網羅した冊子の編集を手伝ったりしていました。
—その「双葉郡未来会議」で、みなみさんとKUMAさんは出会ったんですね?
みなみ:私が参画した頃にはすでに、KUMAちゃんは双葉郡内でさまざまなデザインを手がけていました。KUMAちゃんは富岡町で暮らしていたこともあるし、地域のことを知っている人がcotohanaのデザインを担当してくれるというのは、とても大きな意味があると思います。
—デザインって、何かを人に伝える上でとても重要ですよね。
KUMA:私もそう思います。フリーランスで活動を始めた当初は郡山市で仕事をしていましたが、紙媒体よりもweb系のデザインの仕事がほとんどでした。でも双葉郡に仕事の拠点を移してから求められるのはやはり紙の媒体が多くて、しかも最初はあまりデザインに対する価値を分かってもらえないことの方が多かったんです。そんな中でcotohanaのデザインを相談されたとき「デザインが大事だから」って言葉があって。その重要性を同じ価値観で活動出来ているのでcotohanaのデザインはとても楽しいですね!
みなみ:KUMAちゃんのデザイン、すごくcotohanaの世界観にマッチしていると思う!
KUMA:色遣いはかなり悩みました。普段つくるものはモノクロや色数を抑えたシンプルなデザインが多いんですけど、cotohanaのデザインはカラフルにしたいなと思ったんです。自分にはまだ子どもがいないので、正直なところ子育てしている方々の感覚を知らない部分もあって。ママ・パパに伝わりやすいデザインってなんだろうと、子育て雑誌をいくつか買って読みまくりました(笑)。 最近はキッズ用品もくすみカラーやグレートーンがSNSで流行っているけれど、実際ママ・パパってちゃんと子どもの目線で物事を考えるから、子どもが認識しやすい色や覚えやすい柄をきちんと選択していますよね。それに、やっぱりついカラフルなものに目がいっちゃいませんか? 子どもが喜ぶものを選んじゃうというか。そういう気持ちになることに気づいて、子育てする人が手に取りやすくて、持ち歩きたくなるデザインになるように気を遣いました。
みなみ:ビジュアルの方向性のすり合わせをしたのは最初だけで、今は安心してお任せしちゃってます。KUMAちゃんは、この情報誌やwebサイトをつくることの価値や、cotohanaの理念に共感してくれているんですよね。だからこそKUMAちゃんにデザインをお願いしたい! って思えるんです。
KUMA:cotohanaのデザインは割と自由にやらせてもらっていますね(笑)。双葉郡で子育てするって、残念ですけど未だにマイナスのイメージがあると思うんです。実際に郡内のママたちは、周りから「大変でしょ?」「不安でしょ?」って言われることもあると聞きました。だからこそ、みなみから双葉郡のママ・パパのために情報誌をつくりたいと相談を受けたとき、マイナスのイメージを払拭するくらい読んだ人がワクワクするようなものにしたいなと思いました。そのためにも、やっぱりカラフルでポップなデザインにしたいなって。子育て世帯に限らず、双葉郡に対するイメージを楽しく明るいものに変えたいんです。その想いをデザインやビジュアルに反映しました。双葉郡に引っ越してくるママたちも憂鬱にならないように、cotohanaのデザインが寄り添えたらいいなと思っています。
みなみ:この情報誌、すごく好評なんですよ! 特に第1号目は双葉郡内の医療機関の情報を整理して掲載したこともあって、高齢者の方や保育園の先生方にも喜ばれています。KUMAちゃんが言うように、双葉郡で子育てすることに不安を抱えている方々って多いと思うんですよね。それって、知りたい情報にアクセスできないというのも原因なんじゃないかと。cotohanaの情報誌やwebサイトを見れば、医療機関ちゃんとあるじゃん! とか、遊び場も整備されてるんだ! とか、双葉郡の情報にちゃんとリーチできるから、不安要素を少しでも取り除けるんじゃないかな。
KUMA:もちろんネットで検索すればいろいろな情報が出てきます。でも、住所と電話番号と簡単な説明が載っているだけで、本当に必要な人にとっては細やかな情報が足りないんですよね。表面的な情報なので、リアルに感じられないというか。cotohanaの場合は、実際に現地で子育てしている人たちが情報を発信しているので、ママ・パパたちと同じ目線で伝えられる。実際に子育てされている方にとっても、これから移住して双葉郡で子育てしようとしている方にとっても、そのリアルな情報が安心感につながると思います。
信頼できる仲間と一緒にcotohanaを育てていきたい
—おふたりのお話を聞いていると、仕事関係以上に仲間であり友達なんだなと伝わってきます。
みなみ:今みたいな関係になるまで、私たちまあまあ時間かかった気がする(笑)。
KUMA:知り合ってからしばらくは、ちょいちょい連絡はするけど直接会うことはあまりなかったんですよね。でも、みなみから「子どもができました」って報告を受けて、すごく感動したんですよ。「本当にこの地域で生活していくつもりなんだ!」ってわかって。今だから言えるけど、はじめは“お手伝い”として福島に関わってるんでしょ? くらいに思ってたんです。それがこっちで子育てするって知って、彼女の覚悟を感じたんですよね。そのあたりから、私もみなみと一緒に活動する機会が増えていって、彼女が始めた子育てコミュニティの活動も応援したいと思うようになりました。
みなみ:えー! そうだったんだ! その話、初めて聞いた!
KUMA:今では、この地域に関わる活動をしていく中で一番信用できる人です。お互い歩いている道は違うけど、見ている方向は一緒。みなみはいろんな仕事や活動をしているけど、根幹はブレてないから。だから、みなみが「これやりたいんだよね」っていうことは「良いと思う!」って素直に思えるんです。
みなみ:私も同じ! 富岡や双葉郡で何かしたいなって思ったときに、一番最初にKUMAちゃんに相談するんです。地域にどんな変化が起きて欲しいと思っているか、一から十まで全部言わなくてもKUMAちゃんとなら分かり合えるから。
—これからcotohanaをどう発展させていきたいですか?
みなみ:このwebサイトをつくったことへの責任感を今すごく感じていて。つくって終わりではなく、これからも充実した情報を常にアップデートしていきたいです。webは世界中どこからでも見れるものなので、自分が双葉郡の情報を発信していくということに怖さも感じます。けれど、KUMAちゃんやcotohanaのメンバーがいるからきっと大丈夫! って思える。
KUMA:cotohanaを双葉郡No.1の子育てコミュニティにすることが目標ですね!双葉郡に限らず、中通りや会津の方にも支部ができて、福島の子育てコミュニティ・子育てメディアといえばcotohana! と言われるくらいにったら面白いですよね! そのための仲間が増えていけばいいなと思っています。デザイン担当としてそこまでcotohanaを育てたいし、ママ・パパたちのためのメディアづくりに関わっていきたいです。これからもcotohanaを通して、パパママたちがこの地域で子育てすることに楽しさと希望が持てるようなデザインを創っていきたいです。
※「双葉郡未来会議」とは、震災以降バラバラになってしまった双葉郡8町村の住民同士が繋がり、情報や問題を共有し今後に役立てようと発足した、民間レベルで集まれる場所。2015年に設立し、活動。
文:遠藤 真耶 / 写真:白圡 亮次