公開日:2022-06-15 最終更新日:2022-06-16

女性が地域と繋がりながらイキイキと暮らせる場をつくる:南相馬『icoi』

ママたちが“ヒト” “モノ” “コト”に触れ合える場、内と外との繋がりの場をつくりたいと、南相馬市で活動している『icoi』(いこい)さん。なんだか私たちコトハナの思いと通じるものがあるような気がして、いつか一緒に何かしたい! と注目していた存在です。そんなicoiさんに、6月19日に開催する「CotoHANA トークカフェ」にゲストスピーカーとしてご登壇いただくことになりました。私たちもどんなお話が聞けるのか、今からワクワクしています。今回は、共同代表の佐川美和子(さがわ みわこ)さんと、髙橋慶香(たかはし ちか)さんに、icoi設立のきっかけや、活動に込めた思いなどをお聞きしました。この浜通りに、同じ思いを抱いて活動している仲間がいることに、とても心強さを感じます。みなさんにもぜひicoiさんの活動を知っていただき、共に楽しく成長していけたら嬉しく思います。

移住者ふたりの出会い

—まずはおふたりと南相馬市との関わりについてお伺いします。おふたりとも他県のご出身なんですよね?

佐川さん:私は東京出身です。震災前にひとりで浪江町を訪れたことがあって、震災後も気になっていたんです。

一度自分の目で見ておきたいと思って、知り合いを頼ってふらっと南相馬に足を運びました。その知り合いが、若者や旅人が集まるような場をつくっていたんです。何度か通ううちに、私も南相馬に住んでみたいなと思うようになって、思い切って移住しました。

髙橋さん:私は、栃木県出身です。結婚を機に福島に移住しました。

夫が転勤族で、会津→南相馬と移り住んで、今は郡山で暮らしながらicoiの活動のために南相馬まで通っています。

南相馬での暮らしは、人があたたかくてすごく楽しかったんです! だから今もicoiを通して南相馬と繋がっていられることが嬉しいです。

▲髙橋慶香(たかはし ちか)さん

—そんなおふたりが出会ったのは、いつ頃なんですか?

佐川さん:5年前くらいですかね。南相馬市の保健センターで行われていた『ベビーとママのリフレッシュ体操』で知り合いました。

髙橋さん:初めて参加したときに、美和子さんが話しかけてくれたんだよね。

佐川さん:ちかちゃんは確か3人くらいで参加してたよね。「雰囲気が良さそうな人たちがいるな〜」と思って話しかけました(笑)。私はひとりで参加していたので、この人たちと仲良くなれたらいいなって。

女性がひとりの自分として楽しめる場をつくりたい

—おふたりで「icoiを立ち上げよう!」と思われたのは、何かきっかけがあったんですか?

佐川さん:ちかちゃんが「何か仕事をしたい」と言っていて、私の職場が運営する『NARU』を紹介したんです。『NARU』では色々な講座やワークショップを開催していて、その中に『わたしたちの月3万円ビジネス(3ビズ)』という考えを広めている矢口真紀さんがゲストとしていらっしゃった回があったんです。その講演を聞いて、ふたりで「これだね! やりたいね!」って盛り上がって、icoiを立ち上げることになりました。

▲佐川美和子(さがわ みわこ)さん

髙橋さん:ふたりとも南相馬に移住してきて、そんなに友達がたくさんいるというわけでもなく。そんな中で子育てが少し落ち着いてきて、仕事もできるようになったけど、何か物足りないというか。妻でもお母さんでもない“ひとりの自分”としての楽しみが足りないと感じていたんですね。

多分、美和子さんも同じ思いを抱えていたんだと思います。「何かやってみたいけど、何ができるかわからない」という状態だったときに矢口さんの講演を聞いて、「私たちでやればいいんだ!」と思えたんです。考えが切り替わった瞬間ですね。

—『icoi』という名前には、どんな思いが込められているんですか?

佐川さん:最初は本当に右も左も分からないような状態だったので、とりあえず名前を決めよう!って(笑)。結構ポンッと決まったよね? ちかちゃんが「ひらめいた!」って。

髙橋さん:“co”は共有や協力という意味がありますよね。みんなで共に楽しいコトやモノを全部共有しながらやれたらいいな、繋がっていけたらいいなと思って、“i”の間に“co”を入れて『icoi』にしました。みんなの憩いの場になるといいなという思いも込めています。

▲icoiのロゴマーク

鈴木(コトハナ):私たち『cotohana』の“co”も同じです! お花にお水をやったり、太陽の光に当てたりしながら育てていく様子が、子育てのイメージにぴったりで“hana”。みんなで協力して子育てしていこうという気持ちを込めて“co”。それで『cotohana』に決めました。悩むことなく“降ってきた”って感じですね。

佐川さん:わかります! 私も『icoi』ってちかちゃんから聞いた瞬間に「ぴったり!」と思って、他の名前ぜんぜん浮かばなくなっちゃった(笑)。

応援しあえる仲間づくり『わたしのcoしごと 福の島』

—icoiさんもコトハナも、子どもだけじゃなくて大人も楽しめる場づくりを目指しているように感じます。

佐川さん:先日、南相馬の海岸で、親子で自由に絵を描きましょうというペインティングイベントを開催しました。久しぶりのイベントだったということもあって、すごく盛り上がりました。

子どもたちはもちろんですけど、特にお母さんたちがすごく楽しんでくれたんです。子どもが汚れても「いいよ、いいよ〜」って寛容になれてて。その様子を見て、やっぱり私たちがやりたかったのはこういこうとだなって再認識できました。

髙橋さん:とてもいいイベントだったよね!そのとき描いた絵を、『小高つながる市』さんと一緒に開催したマルシェのガーランドにしたんです。ペインティングイベントに参加してくれたご家族がマルシェにも来て、自分たちで描いた絵を探してくれてました。そうやって繋がっていく様子を目の当たりにして、「やってよかったなぁ」って心から思いましたね。

イベント「親子でペインティングをおもいっきり楽しもう!」の活動風景(icoiさん提供)

—他にも『わたしのcoしごと 福の島』という講座も開催されているんですよね? どんな講座なんですか?

髙橋さん:定期的に行なってきたイベントも、実はこの『わたしのcoしごと 福の島』の布石だったんです。私も美和子さんも『coしごと』講座を南相馬でやりたいという思いがあって。でもすぐに始めるのは難しかったので、まずはママたちが集まれるイベントを開催することにしたんです。

佐川さん:イベントでは、お母さんたちの心が満たされるような土台づくりをしました。私たちicoiのことを知ってもらって、ようやく次のステージである『わたしのcoしごと 福の島』を今年から始めることができて、とても嬉しいです。

髙橋さん:先ほども話した“3万円ビジネス”を使って、女性たちの“得意なこと”と“地域に良いこと”を掛け合わせた、無理のない小さな仕事づくりを目指しています。ビジネスというよりも、まちづくりに近いかもしれません。やりがいのある小さな仕事を通して、女性たちの居場所や活躍の場をつくりたいなと思っています。

「わたしのcoしごと福の島」講座の様子(icoiさん提供)

—今年は何人くらい受講されたんですか?

佐川:今年は9人ですね。まずは、3年後にどんな自分になっていたいのか、未来のビジョンを考えることから始めます。そこから、自分が一番好きなこと、本当はどんなことをしたいのか、自分がワクワクすることは何なのか、ということを掘り下げていきます。

それを“地域に良いこと”と掛け合わせると、どんなビジネスが生まれるのかを、お互いに意見を出し合いながら考えていく講座です。

全6回で、プレゼン大会もあります。この地域で実際にビジネスをしている方にも聞いていただき、アドバイスをもらったり。少しずつブラッシュアップした自分の『coしごと』をマルシェで実践してもらいました。

髙橋さん:元々やりたいことはあったけど、子どもがいるからとか、ひとりじゃできないとか、いろいろ考えちゃって諦めている女性って多いと思うんです。私自身、美和子さんという仲間と出会って、一歩踏み出せました。

「自分のことだけじゃなく、“この人を応援したい”と思える仲間ができたことが嬉しい」という声もいただき、少しずつですが自分たちのやりたかったことに繋がってきているなと実感しています。

最初の一歩をicoiと一緒に踏み出そう

—髙橋さんがおっしゃるように、何かやりたいけど躊躇している女性は意外と多いのではないかと思います。そんな方たちにicoiさんからメッセージをお願いします。

佐川さん:「私たちと一緒にやりましょう!」とお伝えしたいです。私とちかちゃんも、ふたりだったから最初の一歩が踏み出せたんだと思います。

子育てをして、仕事をして、家事をして……となると、やりたいことに踏み出せずに心の中で終わっちゃうこともありますよね。

『わたしのcoしごと 福の島』を受講してくれた方々もそうでしたが、一緒に頑張ろうと思える仲間がいるからこそチャレンジできることもあると思うんです。私たちicoiを通して様々な人と繋がってもらい、一緒に一歩を踏みだせたら嬉しいです。

髙橋さん:何かをやりたいと思って、本気で誰かに相談すれば、そこから繋がりができていくのが南相馬のいいところだと思います。一歩踏み出して繋がりさえつくれば、そこからどんどん広がっていきますよ。

『わたしのcoしごと 福の島』は今後も継続していく予定なので、興味のある方はぜひ参加してほしいです。

同じ思いをもった仲間や、一歩踏み出す女性が増えていくと私も嬉しいですし、それが地域の未来にも繋がっていくんだと思います。


取材・文:遠藤 真耶 / 写真:白圡 亮次

取材日/2022年5月

COtoHANA トークカフェイベント情報:https://cotohana.net/event/20220619-talkcafe/

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