公開日:2022-06-15 最終更新日:2022-07-07

地域の大人たちで「ふるさとを自慢できる子ども」を育てたい:広野町『ぷらっとあっと』

広野町で地域交流事業を運営する合同会社ちゃのまプロジェクトの代表・青木裕介さんを取材しました。「もじゃ先生」の愛称で親しまれている青木さんには、6月19日(日)に開催される「COtoHANAトークカフェ」にて活動発表の登壇もお願いしています。そこで今回は、青木さんの活動内容や地域に寄せる思い、双葉郡で子育てをするパパとしての夢についてもお話していただきました。

多世代が交流できる場づくりを

―ちゃのまプロジェクトが行っている活動の内容を教えてください。

ちゃのまプロジェクトでは、多世代が関わり合えるような地域交流事業を行っています。大きなものとしては、『多世代交流スペースぷらっとあっと』の運営や、“ひまわり迷路”の企画運営などです。

『多世代交流スペースぷらっとあっと』は、イベント時の場所貸しだけでなく、話し合いやコワーキングなどに利用できます。小さなお子さんから中高生、大人が日常的に訪れる場所です。

ひまわり迷路は2022年夏で3年目の開催となります。毎年多くの人が訪れますが、開催回数を重ねるたびに周囲の期待度が上がっている実感があります。

―多世代が交流できる場づくりをされているのですね。活動をはじめたきっかけを教えてください。

私が活動をはじめるきっかけとなったのは、2018年に個人事業としてパソコン教室をはじめようとした時の気づきです。町にインキュベートルーム事業がないことは、新しく小さな事業を立ち上げたい人の障壁になっていることを実感しました。

そしてちょうどその際に、人が滞在できる場所づくりや交流拠点づくりに思いをもっていたメンバーと意気投合し、立ち上げたのがちゃのまプロジェクトです。

震災後の避難で広野町を離れた期間に感じていた「ふるさとのために何かをしたい」という気持ちが実った形ですね。

―ひまわり迷路はユニークな事業ですね。地域とはどのように関わっているのですか。

ひまわり迷路の事業には、近所の農家さんや、いわき市で農業を学んでいる方、農業法人の方など、様々な人が関わってくれています。最初はうまくいくかと心配そうに見ていた地域の方々も、反響が大きくなるにつれて喜んで応援してくれるようになりました。

耕作や栽培など、地域の方が力を貸してくれている姿を見るとひときわ嬉しくなります。子どもたちを含んだ多世代が土いじりをする場として、これからもどんどん大きくしていきたいです。

町民の思い出の場所に生まれたコミュニティスペース「ぷらっとあっと」

―ぷらっとあっとの場所は広野駅のすぐ近くですね。

そうですね、ぷらっとあっとを立ち上げる場所として選んだのは、広野駅前にある建物です。実はここは、駅前商店街の一角にあった小さなスーパーマーケットが衣料品倉庫として使っていたもの。

このスーパーマーケットは、地元っ子にはたくさんの思い出が詰まった場所なんですよ。衣料品の商品ラインナップが個性的だったり、デパートの屋上にあるようなコイン式の乗り物があったり。誰しもが思い出を語れて、共感できてしまう場所だったんです。

長年使われていない状態だったため、立ち上げ当初は暗くて虫だらけでした。その状態をDIYで作りこんでいきました。

―DIYで!とても大変だったのではないですか?

『ふたば未来学園』の生徒さんプロデュースの照明デザイン

そうですね。でも、ぷらっとあっとをできるだけDIYで作りたかったのには理由があります。それは、関わってくれた一人ひとりの思い出を詰め込んでほしかったからです。

実際は、コロナ禍で思うように人集めができず、ちゃのまプロジェクトのメンバーを中心にコツコツと準備を進めました。でも、このような状況下でもタイミングよく関わってくれた人たちは、思い出を詰め込んでくれました。

最近だと、『ふたば未来学園』の生徒さんが広野町の流木をつかった照明デザインをプロデュースしてくれました。ぷらっとあっとには完成がなく、今でも物が少しずつ増えています。来るたびに、少しずつ変わっている部分に気づいて楽しんでほしいです。

―木材を基調とした、とても過ごしやすい優しい雰囲気ですね。何やら入口には駄菓子まで販売されていますし。

施設内は高速Wi-Fiも完備されていて、快適に通信できますよ。なのでそれを目当てにした学生さんの姿も見られます。

そして、入口のお菓子にも実は仕掛けがあるんです。ぷらっとあっとでは施設内のお手伝いをすることで「ぷらっとぺい」をもらえて、貯めるとお菓子と交換することができるシステムにしています。

これは、お金やお菓子で釣るわけではないですが、子どもたちの計算したり、考えたり、工夫する力を養う狙いがあります。先日は施設内に侵入しただんごむしを捕獲する仕事をもらった子が、だんごむしの習性や侵入経路を自分なりにホワイトボードで分析し始めました。それがなかなか面白い動きだと感心して見守っていました。

多世代が子育てに関われるような場づくりにチャレンジしていきたい

―広野町で、これからどんなことをして行きたいですか。

ひまわり迷路でも、ぷらっとあっとでも、多世代が交流する場所を大切にしていきたいですね。

現代は核家族化が進んでいるといいます。確かに、いわゆる嫁姑問題のような家庭内不和が起きるリスクは減ったかもしれませんが、その分母親の負担は増えていると思います。おじいちゃんおばあちゃんとの関わりは、子育ての助けになっていた面がありますから。

これは遠い地域の話ではなく、広野町も多世代同居は多くない状態です。子育てを続けていれば、疲れやストレスは誰しも抱えているでしょう。極端な話、そこからネグレクトなどにつながってしまうかどうかは紙一重なのかもしれません。

だからこそ、地域に「血のつながらない親戚」を増やしていきたいという思いがあります。関係人口・交流人口の前に、まずは目の前にいる人とつながるのが第一です。 なので、ぷらっとあっともこれから「何ができる場所なのか」をみなさんと一緒に考えていきたいですし、「何でもできる場所として」皆さんに知ってもらいたいです。そのために、多世代に響くイベント開催やコンテンツづくりを予定しています。

―3人のお子さんがいるパパとしての青木さんにお聞きします。広野町でどんな子育てをしていきたいですか。

広野町に生まれ育って良かったと思う子どもを育てていきたいです。ここにしかないものを、ぜひ見つけてほしい。

私も地域の外に出る前は、「広野町なんて何にもないところだ」って思っていたんですよね。だけど大人になってから、その原因は地域を「ただの生活拠点」と思っていたからだと気づきました。

そこで広野町の情報を集めて、落ち着いて考えてみた結果、広野町の魅力とは「自分を育ててくれた人たちの魅力」だと思いました。例えば、ささいなことでかまってくれるおじちゃんや、学校帰りに水を飲ませてくれるおばちゃん。つまり、「広野町って良かったな」と思えるかどうかは、幼少期の経験が大きかったんです。

私たち「広野町の大人」が行う活動が、広野町の子どもたちの経験につながれば良いなと思います。そして、自信をもってふるさとを自慢できる子どもになってほしいです。

広野町に生まれ育った子どもたちだけでなく、『ふたば未来学園』に通う双葉郡の子どもたちにも、将来自分たちのふるさとを考えるきっかけや、生きるための学びにつながれば嬉しいです。

―最後に、双葉郡で子育てを頑張るパパママへのメッセージをお願いします。

ぜひこの地域でパパママもいろんなチャレンジをしていきましょうと伝えたいです。

双葉郡の魅力は、物は少ないかもしれないけど、色んなチャレンジはできるところだと思っています。何をやっても1番になれる可能性がある、みんなが主役の地域です。自分たちの子育てで精一杯かもしれませんが、背中で見せるという子育てもアリなのではないでしょうか。

地域にプレイヤーが生まれ、ゆるく長く地域と関わってくれる人が増えて、みんながつながる元気な地域になったら良いですね。

プロフィール

青木裕介さん

1981年、双葉郡広野町生まれ。震災後の避難から戻った後、2018年より個人でパソコン教室を運営。多世代から「もじゃ先生」の愛称で親しまれる。1男2女のパパとして子育てにも日々奮闘中。


取材・文:橋本 華加 / 写真:コトハナ編集部

取材日:2022年5月

COtoHANAトークカフェイベント情報:https://cotohana.net/event/20220619-talkcafe/

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