公開日:2024-05-21 最終更新日:2024-06-14

子どもも大人もつながり、安心してできる場所づくり「とみおかこども食堂」

2020年11月にスタートした「とみおかこども食堂」。旧富岡第二小学校跡地に建つ「トータルサポートセンターとみおか」の多目的室で、毎月第3金曜日の午後4時にオープンしています。

“こども食堂”というからには、子どもが主役。歩き始めた乳児から幼児、小学生と、その保護者、そして地域の人たちが同じテーブルにつき、手作りの食事をいただきます。

食べ終わった子から「ごちそうさま」をして、遊び始める子どもたち。年長の子がさりげなく年少の子の世話をし、その間に保護者同士もおしゃべりします。

「とみおかこども食堂」の特徴のひとつは、子どもがいない人でも参加できること。子どもが大きくなり手を離れた人、子どもがいない単身者なども集まり、地域の社交場となっています。

そんな「とみおかこども食堂」という場を立ち上げたのは、震災後に移住してきた3人の富岡町民。なぜ、こども食堂を始めたのか、食堂を通してこの地域でどんなことを実現したいのか、「とみおかこども食堂実行委員会」主催者の3人に話を聞きました。

こども食堂での食事風景

設立メンバーは、鈴木みなみさん、鈴木香織さん、辺見珠美さん。cotohana代表でもあるみなみさんが、富岡町教育委員会から「子育て世帯が対話する場をつくりたい」という相談を受けたことが、こども食堂をスタートするきっかけだったそうです。

当時富岡町は、町の中心部を含む地域の避難指示解除から約3年が経っていました。2018年に町内で小・中学校が再開。2019年にこども園が設立され、少しずつ子どもを育む町の施策が進んでいるところでした。

一方で、双葉郡の子育て支援を目的に活動しているcotohanaも、地域との連携を模索していたそう。みなみさんは、富岡町で子育てをするひとりの母親としても、教育委員会からの相談に共感したと言います。

みなみ「私自身、娘がひとり目の子どもで、どうしていいのかわからないこともたくさんあったから、この地域で子育てをしている人たちとのつながりが欲しかったんです。でも、こども園で他の保護者と顔を合わせても、あいさつだけして終わってしまっていたんですよね。なかなか話しかけたり相談する勇気が出なかったんです。

『よし!明日は⚪︎⚪︎くんママにこうやって話しかけよう!』って、頭の中でシミュレーションしたりしてました笑。

当時はまだ、富岡町に住むことに前向きな人ばかりではなかったから、『ご出身はどちらですか?』って普通の質問をするのにも気合が必要でした。放射線に関する話題とか、子どもの食べ物や水をどうしてる?って流れになったらどうしよう。どこまで踏み込んでいいのかなって」

設立メンバーの鈴木みなみさん

そんな状況の中、教育委員会が求める“対話”は、少しハードルが高そうだと考えたみなみさん。思いついたのが“食堂”でした。まずは、地域で子育てしているママ・パパたちが顔を合わせ、同じテーブルについて一緒に食事をする。そうすれば、かしこまらず自然と会話が生まれるのではないかと考えたのです。

こども食堂の実現にあたり、2019年に当時0歳の娘さんと移住してきた香織さんと、料理上手な友人の珠美さんに声をかけたそうです。

香織「対話をするための関係性をつくる場として、“食堂”はいいなぁと直感的に思いました。富岡町に住んでみると、うちも含め、核家族が多いということに気づいたんですよね。私も子育てしながら『子どもが具合悪くなったらどうしよう』というような不安は常にあったし、近所で『あのお宅、お子さんがいるな』と思っても、急に声をかけるのもどうかなって躊躇したこともありました。単身で暮らしている人も含めて、地域のみんなで助け合える基盤があった方がいいんじゃないかと思っていたんです。そんな時にみなみちゃんからこども食堂の話を聞いて、ぜひ私も参加したい!と思いました」

珠美「みなみちゃんから相談されたときは『え!? 私、子どもいないけど、いいの?』って思いましたね。実は当時、“子どもがいないと一人前じゃない”という雰囲気を地域内でちょっと感じていて。子どものいない私は、どこにも所属していないような、フワフワした感じがありました。だから、みなみちゃんに声をかけてもらえたことが嬉しかった!」

主催者側がコンセプトを提示してしまうと、参加してくれる人が限られてしまうのではないか?という考えから、「とみおかこども食堂」は“あえて明確なコンセプトを示さない”という意見で一致しました。

みなみ「子どもがいて子育て世帯とのつながりが欲しい私やかおちゃん、子どもはいないけどご飯を通じて地域とつながりたいというたまちゃん。私たちの思いはそれぞれ違います。目的はひとつにまとめられないし、まとまらなくてもいいよね!って」

香織「子どもがいる人に限らない『みんな食堂』。それがすごくいいなって思えました」

2020年秋、3人は実行委員として町内の一軒家の台所と居間を借り、「とみおかこども食堂」をスタートしました。会場の都合上、集まれる人数に限りがあったこと、そしてコロナ禍が重なったことから、まずは3人と顔見知りの4世帯ほどが参加し、月1回のペースで開催。

そして2022年春、町の勧めもあって「トータルサポートセンターとみおか」の多目的ホールに場所を移し、より多くの人に来てもらえる環境が整いました。参加者が増えたことで、民生委員の方々など、地元の方が調理を手伝ってくれるように。実行委員の知人だけが集まるような、仲間内のイベントにしたくないという思いもあり、こども園にチラシを置いてもらったり、町の公式SNSで告知してもらったりと、地域の人々に広く周知することを心がけたそうです。

そんな努力もあって、毎回初参加の人が来てくれるようになりました。子どもを中心に、地域の多様な人が集まる場所が生まれ、認知も広がってきています。

みなみ「子どもたちが楽しみにしてくれているみたいで、それが一番嬉しい! あと、保護者の方も、これまであまりお話しする機会のなかった人が参加してくれたり。『あ、この人興味持ってくれたんだ!』って嬉しくなりますね。みんなが楽しんでくれてる様子を見ると、やってよかったなって思えます。人と人が出会う場として、これから面白くなっていきそう!」

珠美「町内のスーパーで買い物をしていると『たまちゃーん!!』って声をかけてもらえることが増えました。こども食堂を通じて知り合いの幅が広がったなと感じます。それがすごくよかったな」

香織さんは、第2子の出産を機に実行委員をお休みし、今は“こども食堂のいちファン”として食堂に参加しています。

香織「主催側から一歩引いて、純粋に参加者として見ても『いい空間だな』と改めて思いますね。元々私が感じていた子育ての不安も、解消されてきています。ママさん・パパさん同士の繋がりもどんどんできてきているなって思います。

一方で、食堂に足を運ぶことすらできないというご家庭もあるかもしれなくて。子育ての課題や地域の課題を、一緒に考えるような関係性をつくっていきたいです。まずは、自分たちにできることから少しずつ積み重ねていければなって思っています」

みなみ「支援が必要なご家庭を、こども食堂や私たちだけで包括できるかというと、現状は難しい。でも、この場に民生委員の方や役場の方も来てくれたりするので、その方々と適切に繋ぐことはできます。それも、こども食堂の大事な役割のひとつになっていますね」

家族の形や目的を問わない、“コミュニティ形成の場”としてのこども食堂。「毎回、ロゴの( )に入る言葉を、参加してくれた人たちに書いてもらっているんですよ」と、みなみさん。「とみおかこども食堂」に参加して感じたことを、それぞれの言葉にして書いてくれます。その言葉たちは、実行委員の3人にも新たな気づきをくれるそう。参加者が書いてくれたシートは大切に保管しています。

今回の取材で、珠美さんが言った言葉がとても胸に残っています。「地域の子どもは、みんなの子ども。私に子どもはいないけれど、“みんな私の子”みたいに感じています」。この言葉が、「とみおかこども食堂」が目指す姿勢を体現しているように感じました。子育て世帯も、単身者も、地域の人たちも、みんなで子どもの成長を見守る。そして、大人同士も支え合うコミュニティとして、さらには誰かの“居場所”として、「とみおかこども食堂」は今後大きな広がりを見せてくれそうです。

取材・文:喜浦 遊、コトハナ編集部

写  真:及川 裕喜

掲載情報にご注意ください

当サイトで紹介・掲載している、施設やイベントの各情報は、新型コロナウィルスの感染状況や対策方針によって変更となっている場合があります。 最新の情報に関しましては、公式サイトをご覧になるか、各施設・主催者までお問合せ下さい。

※尚、今後の状況によって掲載内容が変更になる場合がありますので、予めご了承ください。
関連記事