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双葉郡での子育てを孤立させない。cotohanaのこれまでとこれから

震災から15年。復興が進み街の景色が変わっても、双葉郡で子育てをする日々は、いまも続いています。
山形県出身の鈴木みなみさんは、震災後にボランティアとして双葉郡に関わり、震災・原発事故後の地域づくりに取り組む中で、この地域に定住しました。娘の誕生を機に「双葉郡で子育てする人の暮らし」に目を向け、2019年にcotohanaを立ち上げます。
現在は、浪江町在住の小林なおこさんと共同代表として活動。こどもと子育て世帯が「応援する・応援し合う」コミュニティを目指し、7年目のいまも地域の声を拾いながら、必要な支えを更新し続けています。

共同代表の小林なおこさん(左)と鈴木みなみさん(右)

解消されない子育ての困りごと

富岡町・夜の森公園で遊ぶこどもたち(2025年撮影)

双葉郡内では、震災後15年の間に子育て世帯が着実に増えてきました。cotohanaが2023年に行った「双葉郡における子育てに関する調査」によると、双葉郡内で暮らすこどもの数は、2012年の100人以下から、2024年4月時点で約1,300人にまで回復しています。

その一方で、子育ての困りごとは形を変えながら残り続けます。現時点で、大きく3つの課題が見えてきました。

課題① 必要な丈夫にたどり着きにくい

みなみさんが双葉郡で暮らし始めたとき、こども園や学校以外の病院や遊び場、買い物などの情報は自力で探すしかありませんでした。さらにこの地域は、行政窓口や相談先の案内、サービスとその手続き方法などの更新スピードがはやく、「調べ続けないと古くなる」という負担が子育て世帯にのしかかりやすい状況があります。

課題② 配慮を必要とするこどもへの支援が足りない

もう一つみなみさんが挙げたのが、発達や言語など、配慮を必要とするこどもや家庭への支援です。相談先が限られており、保護者がその情報を探すことに苦労しているのが現状。

また「体感としてここ1年ほどで外国籍の家庭が顕著に増え、言語の壁に関する相談も増えた」とみなみさん。転入手続きや健診で必要な聞き取りが十分にできない、ごみ出しや住まい方、園・学校のルールなど生活の前提が伝わりにくい、言語支援を担う人材が不足し園や学校で現場任せになりやすい、といった困りごとが現場で挙げられています。

一方で、外国籍家族の多くは「できるだけ長く日本で暮らしたい」と考えていることがわかりました。つまりこれは一過性の問題ではなく、地域が継続して向き合うべき課題です。必要な場面で通訳などを入れられる体制を、地域の中で整えていく必要があります。

課題③ 親同士のつながりが生まれにくい

なおこさんは、親同士のつながりが生まれにくい環境にも触れました。行政主催の子育てサロンは平日開催が中心になりやすく、PTAや保護者会がない地域もあります。自治会など地域のつながりの機能も、避難や移住を経て回復途中です。その結果、子育て世帯が地域の中で「ぽつんといる」状態になりやすい、と小林さんはいいます。

子育ては家庭や学校だけで完結しにくく、多世代が目をかけ合う土壌を育て直す必要があります。

cotohanaが後方支援を行った「とみおかこども食堂」での親子の一コマ

cotohanaが続けてきた「情報発信」「つながりづくり」「居場所づくり支援」

こうした変化の大きい地域で親子の孤立を防ぐため、cotohanaは「情報発信」「つながりづくり」「居場所づくり支援」の3本柱で活動を積み重ねてきました。

取り組み①情報発信 子育て情報誌「コトハナ」を作って終わりにしない

特に力を入れているのが情報発信です。子育て情報誌「コトハナ」は年2回発行し、これまでに12号まで制作してきました。誌面内には、保育施設・医療施設・遊び場などをまとめた「子育てナビ」コーナーもあり、情報を継続的に更新しています。Webでも、地域で暮らす子育て世帯の工夫や、地域の取り組みをインタビューして紹介しています。

さらに、新しく移住・帰還してきた家庭に情報が届くよう、役場の窓口や保健師、園の先生など現場の方々と協力し、転入時や手続きのタイミングで情報誌を渡してもらう仕掛けもつくっています。

双葉郡の子育て情報をまとめた情報誌「コトハナ」

取り組み②つながりづくり 子育て世帯だけに限定しない「入口」をつくる

次に大切にしているのが、つながりづくりです。例えば海岸のごみ拾いをする「ビーチクリーン活動」は、子育て世帯に限らず地域の人が自然に混ざれる「入口」として開いているのがポイントです。

2025年度は2回実施し、各回約30名が参加しました。地域の方からは「こんなにこどもがいるとは思わなかった」という声もあり、子育て世帯の存在を伝え、地域とつながるきっかけの場になっています。

ビーチクリーン in 富岡の様子(2025年撮影)

取り組み③居場所づくり支援 担い手を増やし、地域で回る形へ

近年、割合が大きくなっているのが居場所づくり支援です。「こども食堂を立ち上げたい」「運営が続けにくい」といった相談を受け、cotohanaが計画づくりや振り返りを一緒に行い、継続に向けた支援をしています。

「これからは、自分たちで居場所づくりをする以上に、担い手を育てるコーディネーターとしての役割が重要になる」。この考え方への転換を後押ししたのが、「双葉郡における子育てに関する調査」でした。8町村にまたがり課題のばらつきも大きい地域では、各地で担い手を増やし、情報と支援を横に広げるほうが届きやすい。そう捉え直し、これからは担い手の育成と後方支援に、より力を入れていきたいと考えています。

調査報告会&対話型ワークショップ「地域でつなぐ子育ての未来 ~新たな一歩を踏み出してみよう~」を開催

活動を止めないため、毎月の寄付という「土台」が必要

cotohanaは、相談が来たときにすぐに対応を提案できる体制を守るため、寄付を募集しています。寄付は少額から、単発・毎月継続などから選べ、手続きは数分で完了。金額の変更・停止もいつでも可能です。

https://syncable.biz/associate/cotohana

これまでcotohanaは、助成金や補助金も活用しながら活動を続けてきました。しかし震災から15年が経ち、復興の枠組みで支えられてきた助成や補助金の多くが終了期を迎えています。その結果、これまでと同じ規模で活動を続けることが難しくなる可能性も出てきました。

自治体との連携も検討してきましたが、8町村にまたがる双葉郡では調整が複雑で、事業化するのは困難でした。だからこそ、町村の枠を越えて必要な支援に充てられる「寄付」という土台が欠かせません。

今後集まった寄付は、外国籍家庭の通訳支援や、スペシャルニーズの(発達や障がいなどで配慮を必要とする)こども向けのこども食堂の運営などを中心に、必要な支援を継続していきます。

例えば2025年度は、通訳支援を乳幼児健診で2回(計4世帯)、こども園の面談で1回実施し、スペシャルニーズのこども食堂も1回開催していますが、いずれも1回あたり月1,000円×10人分の応援が実施目安になります。少額でも、たくさんの方の寄付があれば、必要な支援を途切れさせない大きな力になります。

こども園の面談での通訳支援の様子(2025年度実施)

最後に、共同代表のお二人からのメッセージです。

双葉郡はいま、街の変化のスピードが早い中で子育てが続いています。大きなニュースだけでなく、日々の小さな困りごとにも目を向けてもらえたらうれしいです。(なおこ)

cotohanaはたくさんの仲間と共に、その時々に必要なことを寄り集まって考え、形にしてきました。無理のない範囲で、cotohanaサポーターとして仲間に加わっていただけたら心強いです。これからもcotohanaを通して双葉郡のこどもたち、子育て世帯を見守っていただけますよう、よろしくお願いします。(みなみ)

https://syncable.biz/associate/cotohana

双葉郡で活動を続ける小林さん(左)と鈴木さん(右)

文:齋藤幸子

写真:コトハナ編集部