【レポート】調査報告会&対話型ワークショップ「地域でつなぐ子育ての未来 ~新たな一歩を踏み出してみよう~」を開催しました!(後編)
2024年11月21日、大熊町にあるlinkる大熊にて「地域でつなぐ子育ての未来~新たな一歩を踏み出してみよう~」を開催しました!2023年度に「双葉郡における子育て環境に関する調査」を実施し、続々と反響が届く中で、双葉郡内で初めて行った報告会。子育て環境に対する考えやこどもたちを想う気持ちが集まりました。
【前編】では、調査結果報告をした第一部、先進事例を学んだ第二部の様子をお届け。後編では、さまざまな立場の参加者による対話がうまれた第三部の様子をお伝えします。
自分の立場から考えるこどもたちとの関わりを「話す」
第三部では、5~6人ほどのグループになって対話を行いました。第一部、第二部を経た参加者たちは、頭や心にムクムクと思いが湧いてきている様子。テーブル毎に用意されていた「家庭教育 / 社会教育」「地域互助 / コミュニティづくり」「スペシャルニーズを抱えるこども / 家庭支援」というテーマにとらわれることなく、日々のなかで感じていることを付箋に書き出していきます。

子育てをする参加者のみなさんからは、リアルな悩みの種が聞こえてきます。一人が話すと「わかります」と共感する声も多く、安心して悩みを吐き出せる場、聞いてもらえる機会があることの大切さを、子育て中の筆者はひしひしと感じました。
悩んでいるのは自分だけじゃない。大変だと感じている気持ちを分かってくれたり、目の前のできごとについて一緒に考えてくれたりする人がいる。そう感じられるだけで、どれだけ心が軽くなるでしょう。
子育て当事者の想い・もやもや
- ママ同士で話せる場がほしい
- こどもの生活リズムを整えるには
- 急な発熱があった場合にこどもを預けられないのが困る
- こどもが学校に行きたくないときはどうする?
- 自分が別の地域で育ったため、双葉郡内でこどもたちがどう育っていくのかワクワクと不安
- 特別支援が必要なこどもを分けることにモヤモヤ
- 頼れる関係性ってどんな関係?

子育て当事者でない方からもたくさんの言葉が出てきたことには、少し驚きがありました。当事者であれば思うところがあるのは当然のこと。しかしそうでなくても、子育て当事者と関わる機会があったり、町でこどもたちを見かける中で子育てについて考えることがあるということにハッとさせられました。
子育て当事者でない参加者の想い・もやもや
- 子育てをしていない自分にできることはなんだろう
- 『みんなで』子育てするって言うけど、みんなってなに?誰?
- 地域のこどもたちに関わるきっかけはどこにある?
- おせっかいはどの程度してもいいのかな
「人生が忙しすぎる」という付箋が特に印象に残っています。育児をしていても、していなくても、人はみんなそれぞれに自分の人生を生きていて、忙しい。当たり前のことですが、子育てでいっぱいいっぱいになっていると「子育てしている私たちのことをもうちょっと考えてよ!」と言いたくなってしまうこともあるかもしれません。
しかし、それぞれに忙しい中でも、それぞれの立場から子育てについて関心を寄せ、考え、行動しようとしている人がいるとわかると、少し気持ちがやわらかく、視野が広がるような気がしました。例えば、今日この場に参加してくれた誰かを頼ることができれば助けてもらえるんじゃないか。そうした心持ちが、子育て当事者かそうでないかの壁を取り払うのかもしれません。

できることを出し合う場面では、それぞれの立場からのアイデアがたくさんたくさんでてきました。すぐにできそうなこと、やり方を考える必要があること。取り組みに対する温度感にもグラデーションがみえたものの、一度「できるかも、やってみたいかも」と言葉にすることで、実現味は増すものです。また、自分が旗揚げせずともすでにある地域の活動に「参加する」だけでも、関わりは広がりそうだという意見もありました。
できそうなことのアイデア
- お母さんがリフレッシュする機会づくり
- 町の人の得意を引き出して、人をつなぐ
- 子育ての悩みを共有できる場
- シニア世代との交流の場
- 移動の手助け
- 広域でのスポーツクラブ
- こども食堂を手伝う、こども食堂食堂に参加する
- 親が活動に参加する一歩を踏み出せるような仕組みづくり
ワークショップの時間を終えてもなお盛り上がりをみせる各テーブル。誰かの悩みやアイデアに「どうしてそう思うのですか?」「それってこんな見方ができそうですね」と意見が交差していく様子は、まさに対話。立場が違うからこそ生まれる疑問が対話を深めます。それぞれの視点を知り、話す時間そのものがこの場の醍醐味だと感じました。

参加者の声
閉会後、参加者にもイベントの感想を聞いてみました。
「調査結果は日頃肌で感じていたことが数値化されており、納得の内容でした。子育てのもやもや話ができたこと、この地域で同じく試行錯誤しながら子育てしている方や応援してくれる方の存在を知ることができ、心強さを感じパワーをもらいました。」(双葉町・保護者)
「地域で子育てしていくことについて改めて考える時間になりました。一人ひとり違う考え方があることに気づけたのも良かったです。みなさんの活動に刺激をもらいました」(葛尾村・保護者/地域団体職員)
「立場が違っても、感じている悩みが似ているのが面白かったです。頼り合う関係性に慣れていないことに気づきました。頼り、頼られる仕組みがつくれれば、救われる人がいるのかもと思いました」(富岡町・議員)
「子育て当事者がもう少し参加してくれると良かったなと思います。でも、平日の日中開催にはなかなか参加できないという状況こそが、子育てをするみなさんのリアルだとも感じます」(いわき市・こども支援実践者)
「普段、中高生と関わる仕事をしています。町での子育てを考えるうえで、学校は大事な場所だと再認識しました。教員ではない立場から、できることを考えるきっかけをもらいました」(広野町・地域団体職員)

こどもたちの健やかな成長を願う人をつないで
震災後の課題も、歩みもそれぞれに違うからこそ、日頃は各町村毎での取り組みも多い双葉郡。そんな中で「こども」をキーワードに集まった参加者を見て、一つのチームのはじまりを感じました。
コトハナのスタッフは、子育て支援実践者であり、双葉郡で子育てをする一保護者です。自分たちが地域で暮らす中での願いも、悩みも、感じています。活動を通して自分が暮らす町村以外の話に触れ、各町村にはそれぞれの良さ・強みがあることも感じられたからこそ、双葉郡全体で子育てを考える視点を持てたら、より良い未来を迎えられるんじゃないかと開いたのが今回の場でした。
コトハナ共同代表・小林奈保子さん「対話の場では、すでに活動の芽が出始めていることが見て取れました。今回のイベントをきっかけに、これからご自身や地域の仲間と、あるいは今日出会った方同士で、新しい一歩を踏み出してもらえたら、本当に嬉しいです。活動を始めた報告も、壁にぶつかってしまったなんて声も共有していけたらと思います」

大変なことは自分だけでなく、地域のみんなで何ができるか考えたらいい。コトハナが想いある人同士をつないだり、活動を育くんだりするきっかけをつくっていくから、大丈夫。イベントの終わりに聞く小林さんの最後の一言には、そんなエールも感じました。
おわりに
これまで保護者やこどもたちと直接関わる活動スタイルが多かったコトハナにとって、今回の調査報告会のように、子育て当事者でない方を大きく巻き込んでいくことは、実はひとつの挑戦だったと共同代表の二人は話します。
後日、「今回のイベントのように、いろんな立場の人に集まってもらって『こども』をキーワードに話をする機会をこれからもつくっていきたい」と振り返りました。その場にはどんな人々が集まり、出会い、話し、活動につながっていくでしょうか。
どのような内容だったとしても、双葉郡のこどもたちを想う人と時間が増えていくことだけはたしか。その先にある地域の姿を想像し、じんわり熱いエネルギーが湧いてくるのを感じました。
文・写真 蒔田志保