【レポート】調査報告会&対話型ワークショップ「地域でつなぐ子育ての未来 ~新たな一歩を踏み出してみよう~」を開催しました!(前編)
2024年11月21日、大熊町にあるlinkる大熊にて「地域でつなぐ子育ての未来~新たな一歩を踏み出してみよう~」を開催しました!
2023年度に「双葉郡における子育て環境に関する調査」を開始してから約1年。双葉郡内外に暮らすさまざまな人と、調査結果を通して双葉郡の子育て環境を共有できるようになり、続々と反響が届いています。
そんな中、双葉郡内での報告会を初めて行いました。当日は約30名の方が参加してくださり、双葉郡の子育て環境に対する考えやこどもたちを想う気持ちが集まる時間となりました。自身も一児の母であるライター・蒔田が、当日の様子を前後編でお届けします。
子育てにまつわるリアルな声を共有したい
2019年から活動を始めたコトハナは、サロン活動や情報誌の発行などを通して、双葉郡内で子育てをする保護者やこどもたちと交流を重ねてきました。一緒の場を共有したり、何度も顔を合わせたりするうち、たくさんのリアルな声を聞かせてもらえるようになりました。
「地域で楽しく子育てがしたい」「こどもたちの健やかな成長のためにできることをしたい」といった明るい声。子育てをするなかでの悩み。こどもたちがより良く成長し学べるように町が充実していくといいなという願い。
こうした子育て世帯のリアルな声をコトハナだけで受け止めるのではなく、こどもたちを想う双葉郡の皆さんと共有することで、地域の子育て環境をより良くしていくことはできないだろうか。そんな想いから2023年度に実施したのが「双葉郡における子育て環境に関する調査」です。
アンケート調査やヒアリングを通して、子育て環境の課題をデータで示せるようになったことで、子育てをしていない人や双葉郡をよく知らない人とでも、課題を共有できるようになりました。

「こども」をキーワードに集まった参加者たち
双葉郡内で活動する方に向けて改めて調査結果を伝えるとともに、これからの活動や描きたい町の風景を一緒に考える第一歩になるようにと企画したのが今回のイベントです。
初めての双葉郡内での報告会にどんな人が集まるだろうと、受付を開始。ふたを開けてみると、保護者やこども食堂などのこども支援実践者のほか、自治体職員、地域団体職員、議員、研究者、まちづくり会社に勤務する人など、さまざまな属性の方が集まりました。
年代も20代~60代と幅広く、参加者の居住地は双葉郡を含む9市町村と広域。普段はこどもと関わることがないという方もいらっしゃり、仕事柄や属性に関わらず、こどもを取り巻く環境に関心を寄せる方々がいることが感じられます。

調査結果を通して、子育てをする人たちの視点を「知る」
第一部は調査結果報告から始まりました。参加者の9割が調査結果報告を目的に来場しており、立場を問わず子育て環境へ高い関心があることが伺えます。
普段子育て世帯やこどもたちが置かれる状況を知る機会がなかなかない人にとって、調査結果は、子育て当事者と近い視点を得る手引きのようなものになるはず。参加者は発表スライドだけでなく、調査結果報告書全文がみられるWebページも照らし合わせながら、熱心に話を聞いていました。自分の立場や取り組みに関わらず、双葉郡の子育て環境を自分事として捉え直しているようでした。

子育て支援を、子育て当事者が行っている現状にある双葉郡。たとえば、子育て世帯の交流の場の一つとなっているこども食堂も、双葉郡では5つ中3つを子育て世帯が始め、運営しています。子育て当事者は活動したい思いがあっても「時間・余裕がない」ことがハードルになり、活動に参画することが難しいことも調査結果から明らかになりました。
さらに、居住する地域において『つながり』があるかどうかで、孤立の度合いや、アクセスできる情報や資源に差があるということも分かっています。つながりのきっかけになっているのが、こども食堂をはじめとした子育て世帯が集まりやすい居場所やコミュニティ。そうした場は情報交換をする機会になるだけでなく、子育てで感じる孤立感や不安を解消することも期待されます。
※詳しい調査結果についてはこちらの記事をご参照ください
こどもたちと子育て世帯がより良く暮らすために大切な役割を果たす活動だからこそ、続けられるように地域でのサポートが大切だと鈴木さんは語気を強めます。
「双葉郡は地域資源(環境・人)やサービスが乏しいながらも、支え合いの力で豊かな暮らしを追及している状況だと感じています。今日ご参加いただいたみなさんとは、どんな部分で協働し、どんな地域を目指していけるでしょうか。実現できたら面白そうなこと、仲間がいたらできそうなこと、ぜひ教えていただき、一緒にあゆみをすすめていけたら嬉しいです」

真剣に、でも朗らかに。課題と向き合う姿勢を「学ぶ」
第二部では、島根県雲南市で実施されている「地域おせっかい会議」について、実際に活動をしている多々納 知鶴(たたの ちづる)さんからお話を聞きました。

雲南市は、日本が25年後に迎えると言われている高齢化社会をすでに迎えたとされる「課題先進地」と言われています。少子高齢化や人口減少などの課題に直面する中、雲南市は「元気になるおせっかい」を通して、地域住民が健やかに楽しく暮らせる社会を目指しています。
双葉郡に地域課題が山積みであることは、住めば住むほど、活動すればするほど感じてしまう場面も少なくありません。しかし、そうした課題に一人で頭を抱えて悩むのではなく、同じ地域に関わるみんなで手を取り合って、少しでも軽やかに前向きな気持ちで取り組みたい。活動内容だけでなく、取り組む雰囲気の育み方も参考にしたいと選んだのが雲南市の「地域おせっかい会議」でした。
「地域おせっかい会議」とは、地域の人の『やってみたい』を応援する活動です。月に一度開催される会議の場には、世代や立場に関係なく地域住民が集まります。困りごとや気がかりなことに対し、会議の場で「こんなふうにしてみたらできるんじゃない?」と参加者同士で話が広がり、活動の形にしていくのがおせっかい会議の特徴です。
多々納さん「一人で頭を抱えている時間よりも、みんなでアイデアを出し合いながら楽しくできる方法を模索する時間の方が和気あいあいとしていて雰囲気が良いんです」

さまざまな事例紹介を交えながら、おせっかい会議には、やりたいことや好きなことで人がつながっていく風景があると多々納さんは教えてくれました。それは、地域課題を解決するために集まるのではなく『地域を元気にしたい』想いで人が集まり、それぞれができることを提供していく場だからなのかもしれません。
多々納さんの和やかな雰囲気も相まって、第二部が終わる頃には場の空気も一気にほどけていました。

第一部、第二部を経て、参加者は何を感じどんなことを考えているのでしょうか。続く後編では、お互いの視点で対話を深めた第三部の様子をお届けします。
【後編】はこちらから
文・写真 蒔田志保