公開日:2024-10-25 最終更新日:2024-10-25

【座談会】子どもの居場所は、親にとってもよりどころ。双葉郡で子どもの居場所づくりをする仲間で集まりました(後編)

ふくしまこども食堂ネットワークと一緒に、「双葉郡における子育てに関する調査」を実施したいわき・双葉の子育て応援コミュニティcotohana(以下、コトハナ)。調査結果をまとめる過程でこぼれ落ちてしまった声をもう一度すくい上げるべく、調査チームや調査対象となった保護者での座談会を実施しています。

第二回となる座談会には、双葉郡の各地で子どもの居場所づくりに取り組むメンバーが集まりました。前編では、それぞれの活動が始まるまでの経緯をお届け。後編では、実際にやってみてからのことに、話題が広がりました。

変わる立場や予想外の参加者の声。やってみたから感じたこと

横山さん「活動については、現在進行形でやっている方も、一旦お休みしてる方もいらっしゃると思うんですけど、実際に活動してみていかがでしたか?場を開いたり、自分が関わってみたり、いくつかの観点があると思います。参加者の方の様子や感想なども聞いてみたいです。

佐々木さんは、最初はコトハナの活動に参加することから始められましたよね。今はコトハナのメンバーとして動いているということで、いったいどんな変化があったのでしょう」

佐々木さん「私は移住して最初の1年間、コトハナが主催するこども食堂に、いち参加者として行っていました。どんな人がどれだけ住んでいるのか全く分からないまま行ってみると、今日も来ているりょうちゃん(日野さん)がいて。双葉郡に若い子がいるんだ!と驚きました。

何度もこども食堂に通ううちに、子育て世代がたくさんいることが分かり、そうしたみんなと会うことで仲良くなれました。いわき市で暮らしているときは、気軽に子育ての困りごとを相談できるような友達がいなくて、ずっと孤独だったんです。今は、例えば学校からもらった資料について確認し合えたり、子どもとの接し方について相談したり、そうした関係のお友達がいることにすごく救われています。

今ではコトハナのメンバーになりましたが、私みたいに、最初はどうしていいか分からないという方もたくさんいるんだろうなと思うんです。だからこそ、子ども同士の仲が良いとか、気になるお母さんとかにはちょっと声かけをしてコトハナのイベントに誘ってみるようになりました。それで、リピーターになってくださった時に良かったなと思って。『愛菜さんが声をかけてくれて、お友達になれて嬉しい』って言ってくれるのが、すごく嬉しいんです。私も同じ気持ちだったから」

横山さん「それで今はメンバーとして、双葉郡に暮らす保護者同士をつないでいるんですね。

佐々木さんが出会った若者、日野さんの話を次は聞いてみたいです」

日野さん「私の活動である『ならはこどものあそびば』に来る子どもたちは、自分のやったことを見てほしいと感じている子が多い気がしています。働いている・いないに関わらず、周りの大人が忙しいっていう状況はあるのかなと想像していて、気持ちの発散ができる場を子どもたちには作れたらなと思いますね。場をひらいて、もうすぐ2年。子どもたちにとって、私は先生でも友達でもない、変な存在らしいんです。怒らないからか、子どもたちからの当たりも強いんですよ(笑)。

それでも、私以外の周りの大人には、相手をみてコミュニケーションをとれるようになった姿がみられるようになりました。あと、家じゃない場所だけど『おかえり』って言ったら『ただいま』って返してくれるようになったりとか。そういう小さな変化は大事にしていきたいなと思います。

私は子育てをしていないので、保護者の方たちがどういうところに悩みを抱えているのかは、まだ分からないところもあるんですけどね」

吉田さん「私は7ヶ月間、月に一度、団地の集会所で餃子をつくるこども食堂をやったんです。毎回、親子とサポーター、合わせて20~30人くらいの方が参加してくれました。

開催場所を団地の集会所にしたのは、小学校から1番近い、キッチンが付いた集会所がそこだったからです。こども園や放課後こどもクラブは保護者のお迎えが必要だし、スクールバスを利用する子どもが多いので、学校から近い場所でやることで、足を運べる子どもが増えたらなと考えたんですよね。団体ではなく個人での開催だったので、チラシも広く配りすぎず、小中学校のみにしました。

本開催する前に、こども食堂とは言わず、プレイベントもやってみたんです。最初は自宅で小さく、みんなで餃子を包んで、食べて、初回からすごい良かった!

その後集会所で、近隣の人を誘って少人数でおこなってみたところ、本来一番参加して欲しい子どもではなく、集会所に他の人が先に多く来てしまったんです。そうすると子どもが入りにくくなってしまうので、こども食堂として活動するようにしました。子どもや子育て世代の人が地域と交わるきっかけにという思いが中心にあったのはたしかですが、毎回サポーターとして来てくれる近隣のおじちゃんが自然と子どもたちと遊んでくれるのはいいなあと思いましたね。

浪江町は今のところPTAがないし、子育て世代の仲間とつながる機会が本当にないんです。すでに知り合い同士の方はいるけれど、私のように引っ越してきた時に、例えば授業参観でいきなり連絡先の交換しませんかとは、なかなか言えない。だからこそ、こども食堂の場で、保護者同士がつながっていく姿を見られたのは良かったです。

あと、私の活動を見て、手伝ってくれた方が地域食堂を立ち上げたんですよね!その方が、『吉田さんが、子どもがいるのにやっているのを見てたからできた』と言ってくれるんです。私が活動を自分で再開したい想いにもつながっています」

横山さん「同じく、こども食堂を立ち上げた村上さんはいかがですか?」

村上さん「私は最初の一回目は、『来てくれる人がいるか分からないな……』ぐらいの気持ちでスタートしたんです。ただ、やることを周りの親子に声かけしてみたら『行きます!』っていうリアクションが想像以上に返ってきて。当日、蓋を開けてみたら大人と子ども、合わせて120人の方が来てくれたんです。日ごろの町並みからは想像できなかったけれど、こんなに人がいたんだ!ということを、やってみて思いました。もしかしたら、待っていてくれた人もいたのかな、とも。

あと、自分が地元のこども園で働いている強みもすごく感じました。広野町では、地域イベントがないわけではなく、知り合いがいないから行く勇気がないという人も多くいて。『村上さんのところだったら行ってみようと思えた』という声を今回聞き、自分が地元に戻って、活動を始めてみて良かったなと思いましたね。

子どもたちやママ友はもちろん、おじいちゃんやおばあちゃんという感じで、参加者の年齢層も幅広かったです。『どっからきたんだ~?』とか、隣り合わせになった人同士で自然とコミュニケーションがうまれているのがすごく嬉しかったなぁ。

こども園で働いていると、子どもたちが『次はいつやるの?!』とワイワイ話しかけてくれるんです。わが子も、こども食堂に行くと褒められることが多くあるようでいつも楽しみにしています。そういう子どもたちの姿に、私自身が一番助けられているなって思いますね」

関わり方のステップアップをしたり、自ら旗揚げをして始めたり。そうしたアクションには勇気がいるものですが、それ以外にも、始めの一歩を後押しするスイッチがなにかあるのでしょうか。

日野さん「私自身も、自分が欲しいと思った場所を自分でつくっていけるような地域になったらいいなと思ってるんですが、それって大変じゃないですか。気持ちはあるけど活動を形にはしない人も多い中で、みなさんがアクションできたのはどうしてなのか気になりました」

村上さん「私の場合は、いろいろなことのタイミングが合ったことかも。

子どもたちが集まる場をつくりたいと思っていたら、地域でこども食堂の講演会が開催された。その講演会で出会った人たちに恵まれた。地元ですでにコミュニティを育んでいる人とつながれた。最後に、『やるしかないね!』と背中を推してくれた人がいた。

考えていたことが、あれよあれよとつながって、気づいたらやっちゃってたみたいな。こども食堂をやるのが目的ではなかったのにっていうのが、自分でも不思議です(笑)」

横山さん「やろうかなって思った時にすぐやれるかどうかは、結構重要だなと。鉄は熱いうちに打てといいますが、何をやればいいのかなと考えるうちに、やろうかなって思った気持ちが絞んでいっちゃうこともあると思うんですよね。今回の村上さんのように、ドミノ倒しみたいにトントントンって進むことがあると、もしかしたら踏み出しやすいのかもしれませんね。つながりの窓口みたいな存在も大事なのかも」

コトハナのイベントやこども食堂の講演会。関心事が同じ人々が集う場での出会いこそ、つながりの窓口になりうるのかもしれません。そうした場で自分の思いを話してみることも、行動を前進させるひとつの要因のよう。楽しそうに活動する人の姿に引っ張られて「やってみたい!」の気持ちが刺激されることもある、なんて話も飛び交いました。

双葉郡ならではの難しさってなんだろう

保護者同士のつながりや子育て世代が孤立しないようにというのは、どこの地域でも大事といえること。双葉郡だからこそ、今住んでいる町だからこその課題というのがあるんじゃないか。座談会も終盤に差し掛かり、地元によりフォーカスした話題が飛び交います。

吉田さん「小中学校、あるいは高校入学のタイミングで転居される方がある程度いると感じています。子どもたちは学校と家の往復をするだけで、普段は町の人と関わらないまま学校卒業と同時に町を離れるとなると、地域とつながることないなあって。だからこども食堂とか、学校以外でつながれる場所があるとがいいなって思います」

村上さん「通う学校や住んでる場所に関係なく、誰もかれもが集まれる場所やコミュニティがあったらいいですよね。広野町は中学校が二つあるんですが、どっちに行ってるかという話になりやすいんです。成人式とかどうなるんだろう…..と考えちゃいます。

横山さん「肌感ですが、中学校だけでなく、属性によるラベリングが双葉郡は多いなと感じることがありますね。地元出身者か移住者か、IターンかUターンかとか……」

日野さん「私は、若者の移住者で、大学のインターンで来て活動している人、といった感じでみられることが多いです。震災後どの程度経ったタイミングで地域に暮らし始めたかとかも、ラベルの一つになっているかも。地元出身だったらもうちょっと伝わり方が変わったかもと感じることも、活動の中ではあって。お嫁さんとしてここに来たお母さんの中には、同じような気持ちで活動に踏み切れない人もいるのかもしれないなと今思いました。

世代や立場によらず、一人ひとりがフラットな関係でつながれる場所が欲しいんじゃないかなぁ」

横山さん「活動してきた中で、困ったことはありましたか?」

日野さん「人手の少なさには課題を感じています。今やっていることと同じような活動を他地域でもやってほしいと言われるのですが、なかなか難しくって。人手がないのが課題ですね。私自身も出かけることがあるので、自分がいなくても場を開けるようにするという意味でも、一緒に場を育んだり、広げたりできる仲間がいるといいなって思います。

それから、今は社会的に人の子どもに口出しできない感じがあるじゃないですか。だからか、地域の方も遠慮してるような感覚があるんです。こちらとしては怒っても問題ないと思ってるけれど、なんか言われたら嫌だから関わらないみたいな。普段から顔が見える〇〇さんの子、みたいな感じだったら声をかけられるのかもしれないけど、そういう関係性は希薄になってることを感じます。子どもたちと地域のみなさんをつなぎ直せないかなと模索中です」

吉田さん「保護者同士がなかなか機会がないからこそ、集まると暮らしの中での困りごとはポンポン、ポンポン出てくるんです。でも、その相談を伝える先がないんですよね。行政サービスの中には再開していないものも多いし、子どもの発達に関わる専門機関もないような状況です。話を聞いて、頼れる先につないであげたい気持ちはあるけど、それができないのがもどかしい」

村上さん「町役場の窓口に行っても、行政は行政で手一杯で頼れないという場合もありますよね。自分や活動自体が、まだ行政とうまく連携できていないというのが気になるところではあるのですが。

私に今できることは、困りごとの受け止め口になることなのかなと。話を聞いてもらうだけでスッキリすることってあるじゃないですか。問題を解決することはできないけど、リフレッシュも兼ねたおでかけに誘って、親子で遊ぶとかしてね。それが今のベストな対応と思いながらやっています」

佐々木さん「悩みを聞くことも話すことも私は多いのですが、村上さんのおっしゃるように、話すことでスッキリするのって本当に大事だと思います。小さなことでも溜めておくといつの間にか爆発して、もっと困るということも経験したので。だから、たとえ困ったままだとしても話せる場があることは大事。

ついこの間も、子どもが暴れちゃって本当に大変だったという話を友達に聞いてもらったら、意外と面白い場面だったかもと振り返ることができたんです。それに、相談してもらうことで自分の子育てとの共通ポイントが見つかることもあって、学びがあります」

お祭りやワークショップなど、子どもとも一緒に楽しめる地域イベントはあるけれど、日常のことを話す場がないという声も。たしかに、遊びなどの目的のために集まった場で、日々のあれこれを話すまでには少し時間を要しそうです。今日の座談会のような場が、これから増えていくといいのかもしれません。

つながりは、コミュニケーションが起きること

横山さん「今日の座談会のはじめ、『つながり』って何のことを指しているのだろうという問いが僕にはあったのですが、みなさんの話を聞いていてモヤモヤが解けました。コミュニケーションなんですね。それは連絡先をただ知っていることや、PTAの場で名前だけは知っているみたいなことではなくって、子育ての相談をし合ったり、地域の情報を共有したり、そういう話ができること。初めましてだろうが、何度目ましてだろうが、そうやって会話が起こることがすごく大事なところなのかなと話を聞きながら思いました」

「子育てに悩んだ時に気軽に相談できる友達がほしい」

「親子ともに、この地域で住みよく暮らしたい」

そうした内なる声を少しずつでも地域の誰かに話したり、動いてみたりしている姿が共通していた座談会メンバー。彼女たちがいることこそ、町をにぎやかにする理由であり、またそれは住民、特に子育てをする人々にとっては心強いことなのだろうと思います。

自分が旗揚げしなくとも、今日の座談会メンバーが企画する活動に参加するゆるやかなスタートも関わりの一つ。気になる活動やメンバーがいたら、ぜひ一緒に混ざってみませんか? コトハナのWebページやSNSでも、引き続き情報発信していきますね。

取材・文 蒔田志保

撮影 コトハナ編集部

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