公開日:2024-08-30 最終更新日:2024-09-04

【座談会】「双葉郡における子育てに関する調査」を調査チームで振り返って(前編)

2023年秋から約半年にわたり、私たちいわき・双葉の子育て応援コミュニティcotohana(以下、コトハナ)はふくしまこども食堂ネットワークと協働で「双葉郡における子育てに関する調査」を実施しました。

双葉郡における子育て世帯の実態や課題を把握し、双葉郡の子ども・子育てへの支援や資源が集まるきっかけとなること、子育て当事者、子育て支援団体、行政など、双葉郡の人たちで子ども・子育ての未来を共に考えていくための材料を得ることを目的としたこの調査結果は、地域のさまざまなシーンで活用され始めるほか、メディアで取り上げていただいたりと、少しずつ反響をいただいています。

そうした中、今回は調査チームで振り返りを実施。調査をするなかで感じたことや、データにまとめたからこそ見えにくくなったこと、そして今後の取り組みについての話が盛り上がりました!

【座談会メンバープロフィール】

(左から順に)

遠藤智栄(ちえ)さん / ファシリテーター

鈴木みなみ / コトハナ共同代表

小林なおこ / コトハナ共同代表

宮本裕子さん / 統計調査士、ワークショップデザイナー

横山沙織さん / 認定NPO法人底上げスタッフ

【調査の所感】感覚がデータ化された意義と調査を通した出会い

早速、今回の調査を行った所感をみんなでシェアしていきます。今回は各テーマ毎にまず2~3分、付箋にそれぞれで感じたこと、考えたこと等を書き残し、それをもとに全員の話を聞いていくスタイルでの進行です。

ファシリテーター遠藤さんによる進行

多くのメンバーに共通していたのは「なんとなく肌で感じていたことが数値で見えた」ということ。

鈴木さん「データで示せるようになったことで、すでに地域の人と話ができていることにはすごく希望を感じます」

小林さん「対子育て支援者だけじゃない人とも、話せる材料になっているよね」

横山さん「調査をする過程で、地域にいる『何かしたい』と思っている人がいることにも気づけました。新しく出会った人たちとも、望む地域のかたちを議論をしていきたいし、今回の調査がそのきっかけになったらなと思います 」

鈴木さん「取材当時、すでにひっ迫感のある困りごとを目の当たりにして。すでに、追加調査も始まっていますが、引き続きヒアリングを重ねていきたいと気持ちを引き締めました」

日ごろから双葉郡やいわき市で活動する三者に対し、神奈川県在住の宮本さんからは外からの視点を交えた声が上がりました。

統計調査士、ワークショップデザイナーの宮本さん

宮本さん「私は双葉郡外から調査のサポートをしている立場ですが、コトハナのみなさんは普段の生活圏内に調査で声を届けてくださった方がいます。だからこそ、調査結果を表現する難しさはあるんじゃないかなと想像しました。今回は、地域外の方にもわかりやすいように、またメディアでに取り上げてもらいやすいように見出しづくりにも工夫をしましたが誤解なく伝えることとのバランスは難しいなと感じました。調査結果の表現、発信を活かす方法がもう少しあるんじゃないかと模索したいです」

小林さん「地域に根付いた文化や習慣は、子育てに限らず『震災前からこうだったよ』ってことがあるのは分かっているのだけど、今ここ(双葉郡近隣)で生きてる人たちがぶつかっている課題を伝えられたらいいよね」

コトハナ共同代表、小林さん

調査の中で、仕方ない、しょうがないという反応を示され、力不足を痛感することもあったというメンバーたち。調査結果の中でつながっている地域の課題もあるんじゃないかと考察していました。

そして座談会は今日の本題、提言への深掘りへ進んでいきます。

提言のおさらい

今回の調査を経て、コトハナは3つの提言を提唱しています。座談会では、調査結果を提言にまとめる過程で削ぎ落してしまった思いや言葉をすくい上げ、見つめ直しました。

双葉郡における子育てに関する調査結果報告書より

【提言1】子ども・子育て世帯が豊かに暮らし、学び育つ地域へ ― 専門家・アカデミックな分野からの知見と意見交換を ―

鈴木さん「今回の調査では、ヒアリングやアンケートの数こそ多くなかったものの、スペシャルニーズを持っている子どもたちとその家族の支援について、すでに不安や不満の声も上がっていました。そういった子どもたち、子育て世帯を取り巻く環境については、ニーズが変化していくこともあると思うので、引き続きリサーチをしていく必要があると思っています。でも この提言については、コトハナが自分たちでサービスを作っていくのがすごく難しい部分であると思っていて。福祉の専門性を有している団体などの、専門的な視点が欠かせないなと感じ、この提言を1つ目にもってきました」

コトハナ共同代表、鈴木さん

今回の調査では、双葉郡で子育てをする72名の保護者がアンケートに回答。その点について、さらにリサーチを続けたり、子どもたち自身に意見を聞く場を設けたいという話題に。

横山さん「活動計画や政策(施策)に、当事者の声を反映できる仕組みがあるといいと思うんですよね。そのためには、子どもたちや子育て当事者の声を聞き取る定期的な機会が必要なんじゃないかな。すでにやっているところの数も調査してみたいですね」

宮本さん「今回調べられなかったことや、データとして整理できなかったこと、自分たちで調べられるところがまだある気がしています」

双葉郡は南北に長く広域で、地域にある資源もさまざま。すでに起こっている活動やスペシャルニーズの数に関しては、リスト化することで人と話しやすくなるかもという話もありました。

いわき市に在住しながらコトハナチームに伴走する横山さん

自分たちで調査を続けることとあわせて、今回の調査結果を外部のチームと共有することでみえてくることもありそうです。

小林さん「今までもお世話になってきた企業や民間団体に調査結果をまずはどんどん共有して、意見交換の場を作っていくみたいなのはやってみてもいいのかも。子育て支援に何かしら携わりたいと声をあげてる方も中にはいらっしゃるんですよね」

鈴木さん「医療や学校のことなどを考えると、一つひとつの単一町村でやることはすごく大変だから、双葉郡は広域で考える視点が必要ということを、改めて感じました。一つの課題が例えば、教育×福祉といった感じで他分野を横断していることも難しいなあと思って。双葉郡の状況やコトハナの活動に思いを寄せて、長くご一緒できるような方々と出会い、関係性を築けたらと思います」

宮本さん「私はこの調査がなければ双葉郡に来る機会がなかったこともあり、地域外に暮らす人はここの現状を本当に知らないだけというのが一つの壁になっている気がしました。調査報告会の話も出ていますが、そうした発信を受けて、関わりたいといってくれる人はいるんじゃないかと思います」

では、一体どういう人や活動と手を取り合えるといいんだろう? そこで、メンバーたちはこれまで関わってきた方々や団体、これから出あいたい人物像などを書き出してみることに。福島大学や相双地域でメンタルケアを行う「こころのケアセンターなごみ」など地元の団体や全国に普及する支援団体、日本各地にある教育や福祉にまつわる団体名が次々とあがりました。

遠藤さん「大学の先生をご存知の方が多くいらっしゃるので、学生さんとコラボするのはどうでしょう。卒論のテーマとして研究してもらえるかもしれません。

今は、さまざまな方との共同研究なども多いので一緒に課題を考えてくれる方が見つけられるとよさそうだなあと、皆さんの話を聞いていて思いました」

調査結果を見ながら、振り返るように話していたみなさん。あっという間に、時間の半分が過ぎてしまいました。

後編では、残り2つの提言の深掘り、コトハナで今後やりたいこととして出たアイデアをお伝えします!

後編はこちらから

取材・文 蒔田志保

写真 新田真由子


「双葉郡における子育てに関する調査結果」についてはこちらからご覧ください。

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